夫を殺した近藤虎次郎を"討つ"と心にきめて彦根を出奔した三千代。それから三年、いま三千代は剣客・加藤平十郎と一つ臥床にいる。平十郎は近藤を討たねばならぬと決意を固めているが、三千代はもはや、亡き夫への思慕も、近藤に対する怒りや怨恨までも、日に日に薄らぎつつあった──。封建の世にひとり生き抜く女の強さを描いた時代長篇。