



ヘンリク・マルベア,エミル・ハス・クリステンセン,プレーベン・レーアドルフ・リュ,カール・テオドール・ドライヤー(監督、脚本),カイ・ムンク(原作),ポール・シーアベック(音楽)
販売会社/発売会社:(株)紀伊國屋書店((株)紀伊國屋書店)
発売年月日:2010/05/29
JAN:4523215038836
メディア形式:DVD
規格品番:KKDS553
抵抗の牧師として知られ、デンマークにおける反ナチスのオピニオン・リーダーであったため、戦争末期にナチスに惨殺されたカイ・ムンクが1925年に書き、1932年に初演された舞台劇「御言葉」を原作とした、カール・Th・ドライヤー監督による奇跡劇。デンマーク映画の古典として知られ、映画史の上でもドライヤー監督の代表作の一つとして語られている作品である。 舞台は20世紀前半のユトランド半島にある小さな村で、そこではキリスト教の中の派閥がたがいに信仰のあり方をめぐって対立していた。劇はグルントヴィー派を信仰するボーオン農場の一家を中心として、この家族の生活、家族の中にある問題を生き生きと描いている。ボーンン家の三男はグルントヴィー派とは対立するキリスト教の宗派、内的使命派を信仰する家の娘を愛しているが、宗派の違いから二人の結婚は困難な状況にある。また次男は正気を失っており、自らがイエス・キリストであるような言動をおこない、ボーオン家の家長を悩ませている。信仰を中心として生きている人々の素朴な日常が、格調の高い演出によって進行していく。 ドライヤーはカイ・ムンクによる室内劇を、原作の劇にある室内劇的な雰囲気を崩さず、しかし同時に野外場面も取り入れながら、劇の空間的な広がりを極めて新しく独創的な様式によって構成している。激しいアクションなど全く存在せず、劇は殆ど静態的ともいえるほど静かに進んでゆく。しかし登場人物たちの内面的な変化や反応は、そうした静寂の中にあっても非常にヴィヴィッドに捉えられ、静かさの中に大いなる感動が生まれる。 周到に計画された映像の造形的美しさには、目を見張るものがある。とくにロングテイクによる映像の捉え方、カメラのゆっくりとした動きは、古典的映画のロングテイクの見本のような美しさを見せてくれる。 デンマークの田舎の人々の生活を素朴に捉えたこの映画は、そうした素朴さのゆえにごく当たり前の日常のリアリスティックな表現のようにも見えるが、その中にも若干奇妙なものがある。それは、正気を失った次男の存在である。リアリスティックに見える空間の中で、彼の存在が全く異なった空間を部分的に作り上げているかのように見える。日常生活空間の中の〈聖者〉イエス・キリストの存在は、超現実的だ。現実と超現実、この映画の重要な側面がここにある。そして映画史上名高いクライマックスの奇跡の場面