

基本情報|Release Information
英国ギター表現の臨界点が、80年代初頭の真空に刻印された記録
レーベル:Virgin / Victor Musical Industries
品番:VIL-6005
フォーマット:LP
国:Japan
リリース年:1982年
タグ:Hard Rock, 1980s, UK Rock, Guitar Heroics, Studio Work
作品の解読|Decoding the Work
『Corridors of Power』。このタイトルが象徴するのは、力への接近ではなく、感情と構造がせめぎ合う場所=ギター表現の通路である。1982年、ゲイリー・ムーアはすでにコロシアムII、シン・リジィ、G-Forceなどを経て多彩なキャリアを築いていたが、このアルバムで初めて、「自らの名を冠し、その内部に複数の文脈を溶解させる」領域に到達する。
「Don't Take Me for a Loser」や「Rockin' Every Night」といったトラックは、ハードロックとしての構造美とスピード感を持ちながら、そこには完璧すぎる均整を裏切るような“泣き”が常に帯電している。そして「Always Gonna Love You」のギターソロにおいて、ムーアは技巧の誇示ではなく、音の間に残された余白で聴き手の胸を締め付ける。このアルバムにおけるバラードは、80年代的パワーバラードの定型をなぞりながらも、その抑制が逆に緊張を生む。抑圧の表現としてのギターがここにある。
一方で「Wishing Well」(Freeのカバー)や「End of the World」(Jack Bruce参加)といった楽曲は、ブルースやブリティッシュ・ロックの記憶を現在化し、バンド構造そのものが「過去と現在の混合装置」であることを示している。特に「End of the World」でのムーアとブルースの交錯は、Cream以後の幻影を更新する試みとしても読める。かつての神話の“残響”を、自己の声で再起動させるという点で、この曲は本作の重心だ。
Neil Murray(ベース)とIan Paice(ドラム)という重量級リズム隊の参加は、ムーアの演奏を単なる速弾きや技巧の場に堕とさず、重力のある推進力とアンサンブルの呼吸へと引き戻している。その意味で本作は、「ギター・アルバム」ではなく、「ギターが指揮するバンド・ミュージック」なのである。
『Corridors of Power』は、ただのハードロックでも、泣きのギターの教科書でもない。これは、形式と感情が軋む裂け目に、音を置き続けた男の軌跡である。そして、その軌跡がもっとも強く刻まれたのが、このアルバムである。
状態詳細|Condition Overview
メディア:EX
スリーブ:EX
付属品:帯・インサート付属
支払と配送|Payment & Shipping
発送:匿名配送(おてがる配送ゆうパック80サイズ)
支払:Yahoo!かんたん決済(落札後5日以内)
注意事項:中古盤の特性上、微細なスレや経年変化にご理解ある方のみご入札ください。完璧な状態をお求めの方はご遠慮ください。重大な破損を除き、ノークレーム・ノーリターンにてお願いいたします。