キリスト教暦三九五年、冬。アルメニアから戻ったシフはやっと十四歳。迫りくる寒さにそなえて、長く伸びた赤い髪をゆるりと背中にたらしていた。近衛騎兵隊長レギウスも今年で二十一歳。そろそろ浮いた話が出てきてもいいころ。侍女たちの噂ではレギウスはどこかの美女と恋文を交わしているとの話。そんなことを考えていたシフはペルシア帝国の公用語を話す産み月の迫った大きな腹を抱える女と出会うのだった。シフは“時の涙”をアポルオンの虚空城に届けられるのか。