
基本情報|Release Information
打音の連なりが、北国の風景を土ごと呼び起こす。
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レーベル:Columbia
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品番:FZ-7179
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フォーマット:LP, Stereo
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国:Japan
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リリース年:1983
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タグ:Folk, Japan, Traditional, Tsugaru Shamisen, 1980s, Percussive String
作品の解読|Decoding the Work
「たたくものです」とは何か。それは単なる奏法の説明ではない。この語に込められたのは、打つことそのものが伝統であり、語りであり、魂の発露であるという、木田林松栄の芸の本質だ。津軽三味線において、音は弾かれるだけでなく「叩かれる」。その瞬間、楽器は旋律と打楽を同時に孕む複層体となり、ひとつの音が風土、身体、時間を突き抜けて響く。
本作『たたくものです津軽三味線 日本の伝統技三代につぐ』は、初代・木田林松栄による代表的録音であり、三味線の伝統がいかに肉体の運動として継承されてきたかを、音の中に刻印するアーカイヴである。じょんから節や曲弾き合奏において顕著なその「叩き」は、拍節を超えて「拍動」として聴こえる。手首の振幅、撥の角度、絃の張力——それらが記譜不可能な即興性を内包し、時間の縁で揺れる音楽として立ち上がる。
林松栄は単なる技術者ではない。戦後東京の民謡界において、津軽の土着性を「聴くべき音」として中央へと引き上げた存在であり、彼の演奏はしばしば、都市の舞台に田舎の大地を召喚するような性質を持っていた。その延長上に、後進である林松次が新潟から洋楽器との融合に取り組むことは、伝統と革新のあいだにある「継承という創造」の系譜を証明している。
このレコードは、音楽というより「打音による記憶の継承」であり、レコードという物質に記録された「一人の打つ者の身体史」である。
状態詳細|Condition Overview
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メディア:EX+
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ジャケット:EX
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付属品:インサート付属
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