Kiana Lede

Kiki


中古盤

輸入盤

 一時はエレクトロ一辺倒だったソウル/R&B界も,ここに来て原点回帰ではないですが,ソウル/R&B元来のサウンド志向に戻りつつあるような気がします。というわけで,本作の主人公,Kiana Ladeです。アリゾナ出身,現在はカリフォルニアを拠点に活動。シンガーソングライターと女優を両立しているマルチな才能の持ち主。90年代R&Bを今風にアレンジしたら・・・って感じなんですが,バラードなんかは,もっとオーセンティックで,時代やジャンルを問わず,胸に染みるピュアなナンバーがあります。久々にソウル/R&Bらしいアルバムに出会えた,そんな感じです。
 威勢の良い掛け声とは裏腹に,甘美なスロー・ジャム「Cancelled」で,アルバムは幕を開けます。繊細でキュートな歌声,切ないほど甘くムーディーなサウンド,ゆったりと心地良いスウィング感・・・何とも癒されます。続く「Movin'」は,楽園を思わせる温和なメロディーで,ゆったりとスウィングする夢見心地なナンバー。「Mad At Me」は,アウトキャストの「So Fresh, So Clean」の個性的なフレーズを引用。ちょっとブルーなメロディーで妖しげな雰囲気が漂うアップテンポに仕上がっています。
 個人的に惹かれたのが,「Second Chances」と「Plenty More」。
もの悲しいギターのフレーズをループしたトラックが印象的な「Second Chances」は,ラップのようなヴォーカルで切なく歌い上げる感傷的なミッドテンポ。ニヒルな6Lackの歌声/ラップもハマってます。「Plenty More」でもアコースティック・ギターのフレーズが印象的なのですが,こちらは穏やかで温もりを感じさせるメロディー。そこに切ないほどピュアでひたむきな歌声が絡み,グッと胸に染みるナンバーに仕上がっています。終盤のクールなスキャットとジャジーなサウンドが絶妙です。
起伏のあるビートで,時折ラップも交えながら弾むように軽やかにステップを踏む「Labels」のノリの良さも印象に残りました。
そして,バラード中心の終盤は圧巻の出来。
アコースティック・ギターがやわらかなメロディーを紡ぐ「Good Girl」は,内省的ながらも心癒される穏やかなバラード。オートチューンによるヴォイス・アレンジもイイです。美しいピアノをバックに弾き語りのように歌われる「Attention」は,ピュアでひたむきな歌声に胸が熱くなるナンバー。「Separation」は,アコースティックなサウンドに乗って波のように押しては返すコーラスが印象的。メロウで繊細で,ちょっと切ない雰囲気がたまりません。「Protection」は,穏やかなメロディーに物憂げなヴォーカルが郷愁を誘うミッドテンポ。しなやかなグルーヴが夢見心地にさせてくれます。エンディングの「No Takebacks」は,昔懐かしいメロディーに心癒されるアコースティック・バラード。悲哀と温もりが交錯する歌声が胸に染みます。
この他にも,デビュー作に参加したアリ・レノックスとの共演によるボトムが重く伸びやかなスロー・ジャム「Chocolate」,ブルージーなギターをループしたアンニュイな「Forfeit」等々,ほとんどの曲が聴きどころという感じで,これ以上ない充実したアルバムです。
90年代をリアルに経験した人はもちろん,ソウル/R&Bファンなら,聴かないっていう選択肢はないだろうというぐらいの会心作。もちろん,おススメです!